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繊毛病:ヒト繊毛病から明らかになった、NEK10が気道粘膜繊毛クリアランスに担う不可欠な機能

Nature Medicine 26, 2 doi: 10.1038/s41591-019-0730-x

粘膜繊毛クリアランスは、哺乳類の通気性気道が病原体や無用の表面物質を排出する生理的過程であり、基底幹細胞や粘液分泌杯細胞、運動性繊毛細胞、嚢胞性繊維症膜貫通調節タンパク質(CFTR)に富む塩類細胞、免疫細胞などの多数の特殊化した細胞種の協調した働きに依存している。気管支拡張症は、病的な気道拡張が起こる症候群で粘膜繊毛クリアランスの障害に関連付けられ、散発性もしくはメンデル遺伝の結果〔例えば嚢胞性繊維症、一次繊毛運動障害(PCD)や選択的免疫不全〕として発症する。以前の研究で、PCDでの繊毛構造や微小管重合核形成に影響を及ぼす変異が突き止められたが、粘膜繊毛輸送の調節については完全に解明されておらず、この輸送を調整するための治療標的はまだ見つかっていない。今回我々は、NEK10(NIMA-related kinase 10)を不活性化する変異により引き起こされる気管支拡張症候群を明らかにした。NEK10は、哺乳類ではin vivoの機能が不明のプロテインキナーゼである。遺伝学的に改変した初代培養ヒト気道で、NEK10が繊毛細胞特異的キナーゼであって、その活性は運動繊毛プロテオームを調節して繊毛の長さと粘膜繊毛輸送を促すが、正常な繊毛数やラジアル構造、ビート周波数には必要とされない。まとめると、これらのデータは、ヒトで運動繊毛の働きを制御していて、標的候補と考えられる新規のシグナル伝達軸を明らかにしており、粘膜繊毛クリアランス障害を特徴とする他の呼吸器疾患にも関連する可能性がある。

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