Letter

骨髄異形成症候群:TP53の対立遺伝子状態が骨髄異形成症候群でのゲノム安定性、臨床症状、転帰に及ぼす影響

Nature Medicine 26, 10 doi: 10.1038/s41591-020-1008-z

腫瘍タンパク質p53(TP53)は、がんで変異している頻度が最も高い遺伝子である。骨髄異形成症候群(MDS)の患者では、TP53の変異は高リスクMDS、急性骨髄性白血病(AML)への急性転化、従来の治療法への抵抗性、不良な転帰と関連している。TP53の腫瘍を抑制する役割と一致して、患者には単一対立遺伝子性変異および両対立遺伝子性変異の両方が見られる。しかし、TP53の対立遺伝子状態の生物学的および臨床的な影響は、MDSあるいは他のどのタイプのがんでも十分に調べられていない。本論文では、MDS患者3324人でTP53の変異と対立遺伝子不均衡を解析し、表現型と転帰が異なる2つの患者サブセットを明らかにした。TP53変異を持つ患者の3分の1は単一対立遺伝子変異であり、3分の2は両対立遺伝子が標的とされたことに一致して、複数のヒット(マルチヒット)が見られた。複雑な核型、共に生じる変異が少ないこと、高リスクが示されること、それに転帰不良との確立された関連は、マルチヒット患者だけに特異的に見られる。TP53マルチヒット状態は、改訂版国際予後予測スコアリングシステム(IPSS-R)とは無関係に、死亡や白血病への転化のリスクを予測した。意外にも、単一対立遺伝子変異の患者は、転帰と治療への反応でTP53野生型患者と違いがなかった。この研究は、TP53の対立遺伝子状態を考慮することが、MDSの診断および予後の正確さだけでなく、治療応答の将来の相関研究にも重要であることを示している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度