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感染症:侵襲性カンジダ症に先立つ腸への動的な移行が高分解能の菌類相解析によって明らかになった

Nature Medicine 26, 1 doi: 10.1038/s41591-019-0709-7

腸の微生物相は、細菌、アーキア、ウイルス、原生生物と真菌からなる複雑なコミュニティである。構成要素である細菌の組成は免疫恒常性や感染感受性と関連しているが、このような過程における非細菌性構成要素の役割と生物界をまたぐ微生物相互作用についてはほとんど解明されていない。真菌は、免疫不全患者での感染性病態と死亡の主要原因だが、腸の真菌(つまり菌類相)と真菌による血流感染との関連性は明らかになっていない。我々は、最適化したバイオインフォマティクスパイプラインと、アロ造血細胞移植のレシピエント由来の糞便および血液検体の菌類相の高分解能塩基配列解読およびゲノム比較解析とを統合した。カンジダ血流感染の患者は、それに先立って病原性カンジダ属菌類の腸での顕著な増殖を経験していた。この増殖は、多数の種と亜種の間の複雑な動態からなっていて、血流への確率的移行パターンが見られた。病原性カンジダ属の腸での増殖は、細菌の存在量および多様性のかなり大幅な喪失、特に嫌気性菌の多様性喪失と関連していた。このように、腸の真菌と細菌の同時解析によって、真菌の移行を促進し侵襲性疾患を促す可能性のある、生物界をまたぐディスバイオーシス状態が明らかになった。これらの知見は、先制的な治療介入を行う目的で、真菌血流感染のリスクがある患者を特定するための微生物相を用いた方法を助けるものだ。

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