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集団免疫を再考する

Nature Medicine 25, 8 doi: 10.1038/s41591-019-0515-2

2008年1月、海外旅行中に麻疹に感染したのを気付かずに米国サンディエゴに戻ったワクチン未接種の7歳児が、帰国後1週間も経たないうちに麻疹を発症した。麻疹と診断されたのはその翌週だが、その間にサンディエゴ地域の839人がウイルスに曝露され、そのうち11人が発症した。市内の子どもの麻疹ワクチン接種率は約95%で、集団免疫の考え方からすれば蔓延を食い止めるのに十分な率であったのに、なぜこのような集団発生が起こったのか。公衆衛生学の研究者たちは、ワクチンで予防可能な麻疹やポリオ、百日咳といった病気の流行を引き起こす重要な要因としては、2つのことが考えられると述べている。その1つは国内にしろ海外にしろ、旅行をする人の数が増えていること、そしてもう1つは自分の子どもにワクチンを接種しない「ワクチンを忌避する」親が増えていることである。国際的な遠距離移動が容易な現在、一部の感染症のリスクは上昇しており、病気の流行を防ぐには世界中でワクチンの接種率を上げて免疫の壁を作り出すのが最善の対策だと専門家は論じている。サンディエゴのケースのように、ある郡の平均接種率が十分高くても、集団免疫に達しない地域が存在すれば、そこから病気は広がる。ワクチンに対する抵抗感の世界的な高まりは疾患伝播の全体像を変えつつある。ワクチン忌避を解消するためにはどんな政策が有効なのだろうか。

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