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がん治療:クロマチン調節因子は乳がんでアントラサイクリン感受性を仲介する

Nature Medicine 25, 11 doi: 10.1038/s41591-019-0638-5

アントラサイクリン類は、乳がんに対する根治的化学療法の有効性の高い成分だが、かなり高い罹病率とも関連付けられている。アントラサイクリン類の作用の一部は、接近可能なDNA上のトポイソメラーゼII(TOP2)の阻害によるものなので、DNA接近可能性に関わるクロマチン調節因子(CRG)は、アントラサイクリンに対する応答を予測するかもしれないと、我々は考えた。本論文では、乳がんでのアントラサイクリン感受性におけるCRGの役割を、患者と細胞株データの統合的解析によって調べた。10種類の細胞株からなるデータセットで、アントラサイクリン応答と関連する38個のCRGからなるコンセンサスセットが見つかった。一方、早期乳がん患者1006人からなるメタコホートでの生存予測では、発現と治療の間の相互作用を評価することで、発現レベルがアントラサイクリンの効果を決定付けるCRGが、臨床サブグループ全体で54個見つかった。これらのCRGのうち12個は、in vitroで見つかったものと重複していた。Trithorax複合体メンバーなどのDNA接近可能性を促進するCRGは、高発現時にはアントラサイクリン感受性と関連しているが、その一方でPolycomb複合体タンパク質などの接近可能性を低下させるCRGは、低いアントラサイクリン感受性と関連していた。また、KDM4BがTOP2のクロマチンへの接近可能性を調整することが分かり、これによってTOP2阻害剤に対する感受性の機構が説明される。これらの知見は、CRGがDNAの接近可能性を変化させることにより、アントラサイクリンの効果を仲介することを示していて、これは乳がん患者の層別化や治療法の決定に関係してくる。

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