Editorial

臨床研究のレベルを引き上げる

Nature Medicine 25, 10 doi: 10.1038/s41591-019-0619-8

Nature Medicineは過去25年間にわたって、医学に変革をもたらす可能性のある質の高いトランスレーショナル研究を刊行するジャーナルの中で最も重要な位置を占め続けてきた。我々は今回、リーダーとしての責務を果たすために、臨床研究を評価し公表するための本誌のガイドラインを明確な形に改めることにした。そうすることで、国際的に受け入れられている慣例と倫理基準に忠実に従う本誌の方針を再確認するだけでなく、科学における新発見や新技術、ビッグデータを積極的に取り込み、拡大しつつある臨床研究の全体像を把握するという難問への対処を助けることが、この改定の目的である。

その1つとして、我々の現在の投稿規定と医学雑誌編集者国際委員会(ICMJE)のガイドラインに従って、全ての臨床試験はICMJEの基準に適合するものであり、公開されているデータベースに事前登録することが必要となる。これは、臨床研究の透明性を確保することになる。編集者やレフェリーによって臨床研究が適切に評価されることを可能とするために、著者は認可された研究プロトコルを、投稿時に原稿に添付することが不可欠となり、この他にもデータへのアクセスについての申告が必要になる。

Nature Medicineは臨床研究とトランスレーショナル研究の間をつなぐジャーナルとして、ディスカバリー研究などのごく初期の臨床研究や、臨床診療で使われる新技術に関する報告にも注目し、こうした新しいタイプの研究の公表についても、最良の方法を模索してきた。現在、機械学習や人工知能(AI)は実験室レベルの研究を超えて進展し、臨床診療にも取り込まれ、現場で使用されつつある。AIを取り込んだ臨床研究の報告という難問に対処するためには、EQUATOR(Enhancing the QUAlity and Transparency Of health Research)networkなどを使って、医学関係者からコンピューター専門家やジャーナル編集者まで多様な関係者が参加する新しい枠組みが作られるだろう。

臨床研究での厳しい報告基準への我々のコミットメントは、Nature Medicineに掲載される研究の高い質を維持するために不可欠だと我々は考えている。医学界と連携して前進しながら、こうした基準も進化を続け、基礎科学的発見の臨床診療への橋渡しに役立つようにするために我々は包括的な改良を続ける所存である。

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