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白血病:骨髄異形成症候群の急性骨髄性白血病への幹細胞レベルでのプログレッション

Nature Medicine 25, 1 doi: 10.1038/s41591-018-0267-4

骨髄異形成症候群(MDS)は急性骨髄性白血病(AML)に進行することが多い。しかし、悪性形質転換につながる細胞は直接的には明らかにされていない。ヒトでのMDSからAMLへのプログレッションは、新生物性形質転換の細胞起源や機構を決定するための生物システムとなるので、我々はMDSがAMLに進行した患者から長期にわたって採取した試料を使い、高度に分画を行った幹細胞集団について調べた。ソーティングされた細胞集団の標的高深度塩基配列解読と単一細胞塩基配列解読を組み合わせて行い、MDS段階の幹細胞〔免疫表現型および機能からプレMDS幹細胞(pre-MDS-SC)と分類された細胞を含む〕は、芽球細胞よりもサブクローンの複雑性が大幅に高く、加齢に関連するバリアントを多数含んでいることが明らかになった。高度に分画された幹細胞の単一細胞標的再塩基配列解読から、非線形で並行的なクローン進化のパターンが明らかになり、pre-MDS-SC内やMDS-SC内の異なるサブクローンがそれぞれ、MDS芽球の生成やAMLへのプログレッションに関与していた。さらに、表現型が異常な幹細胞クローンは形質転換の間に増殖し、また、AMLへのプログレッションの際にはMDS芽球では検出されなかった幹細胞サブクローンが優勢になった。これらの結果は、MDSのAMLへのプログレッションの際には、多様な幹細胞区画が重要な役割を担っていることを示しており、このことは現在行われているバルク状態の細胞に注目するがん精密医療の手法に関係してくる。細胞をバルクとして扱う手法は、MDSと、おそらく前がん状態から進化する他のがんの両方で疾患のプログレッションや白血病性形質転換を引き起こす、すでに存在しているまれな異常幹細胞を見逃している可能性がある。

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