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糖尿病:メトホルミンはフルクトース-1,6-ビスホスファターゼの阻害により肝臓でのグルコース産生を低下させる

Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0159-7

メトホルミンは2型糖尿病患者の治療に用いられる第一選択薬の1つだが、その正確な作用機構についてはまだ不明である。メトホルミンは、その抗高血糖作用を、主に肝臓のグルコース産生(HGP)を低下させることで発揮する。この抑制は、ミトコンドリアの呼吸複合体Iの阻害と、その結果生じる5′-アデノシン一リン酸(AMP)レベルの上昇とAMPK(AMP-activated protein kinase)活性化を介して起こると考えられてきたが、肝臓のAMPKを欠失したマウスで得られた結果から、この説には疑問が呈されている。今回我々は、グルコース新生における律速酵素でAMPにより阻害されるフルクトース-1,6-ビスホスファターゼ1(FBP1)が、メトホルミンの治療効果の主要な要因として機能していることを報告する。FBP1の点変異で、AMPに対する感受性を失わせるが、フルクトース-2,6-ビスリン酸(F-2,6-P2)による調節はそのままであるものを見いだし、この変異体をマウスにノックイン(KI)したところ、メトホルミン投与への応答が大幅に低下した。この結果は、メトホルミン耐容試験の際や、我々が開発したメトホルミン正常血糖クランプ試験でも観察された。高脂肪食を与えられた糖尿病FBP1-KIマウスでのメトホルミンの抗高血糖作用も、野生型の対照群と比較すると有意に低いことが分かった。以上の結果は、メトホルミンの新たな作用機構を明らかにし、FBP1を分子標的とすれば抗高血糖作用が生じることのさらなる証拠を示すものである。

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