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マラリア:細胞傷害性CD8+ T細胞は三日熱マラリア原虫が感染した網状赤血球を認識し傷害する

Nature Medicine 24, 9 doi: 10.1038/s41591-018-0117-4

三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)が原因の臨床症例数は、毎年ほぼ1億に達する。防御免疫の基盤は十分には解明されていないが、抗体が介在すると考えられている。他の細胞内寄生虫からの宿主防御は細胞傷害性CD8+ T細胞が担っていて、このT細胞が宿主細胞上にヒト白血球抗原クラスIによって提示される寄生虫ペプチドを検出する。細胞傷害性CD8+ T細胞は、寄生虫が感染した哺乳類細胞および細胞内の寄生虫を、細胞傷害性顆粒の放出により傷害する。パーフォリンは抗微生物ペプチドであるグラニュライシンと細胞死を誘導するグランザイムを宿主細胞内に送達し、次いでグラニュライシンがグランザイムを寄生虫体内に運ぶ。細胞傷害性CD8+ T細胞は、血液段階のマラリア原虫(Plasmodium spp.)に対して機能しないと考えられていたが、これは赤血球が一般的にヒト白血球抗原クラスIを発現しないからである。だが、三日熱マラリア原虫は、タンパク質翻訳装置を持つ網状赤血球に感染する。今回我々は、三日熱マラリア原虫が感染した網状赤血球がヒト白血球抗原クラスIを発現していることを示す。感染患者の循環中にあるCD8+ T細胞は細胞傷害性タンパク質を高度に発現しており、三日熱マラリア原虫に感染した網状赤血球をヒト白血球抗原クラスI抗原依存的に認識して免疫学的シナプスを形成し、細胞傷害性顆粒を放出して宿主細胞と細胞内寄生虫の両方を傷害して、再侵入を防ぐ。三日熱マラリア原虫に感染した網状赤血球と寄生虫の傷害はパーフォリンには依存しないが、グラニュライシン(一般的に微生物の膜だけに効率よく小孔を形成する)に依存している。三日熱マラリア原虫は、感染した網状赤血球細胞膜からコレステロールを枯渇させ、それによって膜がグラニュライシン感受性になることが分かった。T細胞によるこの予想外の防御は、三日熱マラリア原虫ワクチンの有効性を改善するのに使えるかもしれない。

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