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老化:老化細胞死誘導薬は老齢期の身体機能を改善し寿命を伸ばす

Nature Medicine 24, 8 doi: 10.1038/s41591-018-0092-9

老齢期の身体機能の低下は身体障害の前兆であり、医療費や死亡率を増加させる。細胞老化は組織機能不全につながり、老化の結果として起こる身体機能低下などの原因である可能性があるが、老化が加齢に関連した病的状態を直接促し得るのかどうか、また老化が治療標的となり得るのかどうかは不明である。今回我々は、若齢マウスに比較的少数の老化細胞を移植すると、持続的な身体機能不全を引き起こすのに十分であるだけでなく、宿主組織に細胞老化が広がることを明らかにする。さらに老化の進んだレシピエントマウスでは、移植する老化細胞の数をもっと減らしても同様の影響があり、生存率の低下を伴うことが分かったので、老化細胞が健康寿命と個体寿命の短縮に影響する可能性が明らかになった。ダサチニブとケルセチンからなる老化細胞死誘導(senolytic)薬混合物は、ヒト脂肪組織の外植片中において、自然発生する老化細胞の数を減らし、脆弱性に関連する炎症性サイトカインの老化細胞からの分泌を低下させた。さらに、senolytic薬の周期的な経口投与は、老化細胞を移植された若齢マウスと自然老化したマウスの両方で身体機能不全を軽減し、治療後の生存率を36%上昇させ、死亡の危険性を65%にまで低下させた。我々の研究は、老化細胞が身体機能不全を引き起こし、若齢マウスであっても生存率を低下させるという説を実証する証拠を提示する一方で、senolytic薬が老齢マウスで残りの健康寿命と個体寿命を増進できる可能性を示している。

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