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がん治療:ナチュラルキラー細胞–樹状細胞軸はチェックポイント療法応答性の腫瘍微小環境を明らかにする

Nature Medicine 24, 8 doi: 10.1038/s41591-018-0085-8

腫瘍内の刺激性樹状細胞(SDC)は、細胞傷害性T細胞の刺激とがんに対する免疫応答の促進に重要な役割を担っている。腫瘍微小環境(TME)内のSDCの存在数を調節する機構を解明すれば、新たな治療法が見いだされるかもしれない。今回我々は、ヒト黒色腫でのSDCの存在数が、サイトカインFLT3LGをコードする遺伝子の腫瘍内発現と関連することを見いだした。FLT3LGは、主にリンパ球〔マウスやヒトの腫瘍では特にナチュラルキラー(NK)細胞〕によって産生される。NK細胞は、マウスTME内でSDCと安定な接合体を形成している。今回、マウスでNK細胞を遺伝学的あるいは細胞学的手法により除去したところ、NK細胞がFLT3Lの産生を介して腫瘍内SDC存在数を正に調節するのに重要であることが明らかになった。がんに対する抗PD-1「チェックポイント」免疫療法は主にT細胞を標的とするが、NK細胞の数は、ヒトがん内で防御的に働くSDCの数、抗PD-1免疫療法への患者の応答性や全生存期間の延長と相関することが明らかになった。今回の結果は、自然免疫に関わるSDCとNK細胞がクラスター状に集合し、これがT細胞を標的とする免疫療法に対する優れた予後予測手段となることを示している。このような自然免疫細胞はT細胞腫瘍応答の増強に必須であって、この軸は新たな治療法の標的となると考えられる。

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