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代謝:インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼの遺伝的欠失は腸内微生物相を介して代謝の健全性を促進する

Nature Medicine 24, 8 doi: 10.1038/s41591-018-0060-4

腸内微生物相の変化、腸管の透過性、炎症、および心代謝性疾患の間に関連があることは次第に明らかになってきたが、まだ不明な部分が多い。インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼは、炎症性刺激に応答するマクロファージなどの多くの種類の免疫細胞で発現が誘導されている酵素で、キヌレニン経路を介したトリプトファンの分解を触媒する。インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼの活性は、エフェクターT細胞免疫の抑制や制御性T細胞の活性化に関わることがよく知られている。一方、インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼの高い活性は心血管疾患の転帰不良の前兆であり、アテローム性動脈硬化や血管炎症を助長している可能性があるので、この酵素は慢性的炎症という条件下でもっと複雑な役割を果たしていると考えられる。インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼの活性は肥満の場合にも上昇するが、代謝性疾患での役割はまだ調べられていない。本論文では、肥満が腸内でのインドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼの活性上昇と関連しており、この活性上昇によって、トリプトファン代謝の産物がインドール誘導体やインターロイキン22の産生からキヌレニン産生へと移行することを示す。インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼの欠失または阻害は、インスリン感受性を改善し、腸粘膜障壁を維持し、内毒素血症や慢性炎症を軽減し、肝臓や脂肪組織での脂質代謝を調節する。これらの好ましい影響は、トリプトファン代謝が微生物相に依存したインターロイキン22産生を行う方向に再編成されたことによるもので、抗インターロイキン22中和抗体の投与によって消失する。まとめると今回の結果は、インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼが腸内トリプトファン代謝の微調整に予想外の機能を持ち、代謝性疾患の微生物相に依存した制御に大きな影響をもたらすことを明らかにしている。そのため、インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼは治療標的候補と考えられる。

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