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造血系関連疾患:顆粒球由来のTNFαは骨髄での血管と造血系の再生を促進する

Nature Medicine 24, 1 doi: 10.1038/nm.4448

内皮細胞は、造血細胞の維持と調節を行っている骨髄間質ネットワークの非常に重要な構成要素である。造血幹細胞(HSC)移植は、ほとんどの造血系関連疾患にとって唯一の治療法で、先立って起こる血管再生はHSC移植の成功に不可欠である。最近のデータでは、成熟した造血幹細胞が骨髄間質細胞の機能を調節することが示唆されている。しかし、同じようなクロストークが骨髄血管系を調節しているかどうかは分かっていない。今回我々は、マウスでの骨髄移植後に、ドナーの造血細胞が類洞内皮細胞に作用し、宿主の血管と造血系の再生を誘導することを見いだした。骨髄性の顆粒球を養子移入すると、移植されたHSCの数が非常に少なかったマウスの死亡が防がれ、宿主の血管と造血細胞の回復が促進されたが、末梢性の顆粒球ではこういう結果は得られなかった。さらに、in vivoで顆粒球の選択的除去を行うと、骨髄移植後の血管と造血系の再生が障害された。遺伝子発現解析により、顆粒球はサイトカインTNFαの主な供給源であることが示され、一方その受容体TNFR1は再生中の血管で選択的に増加することが分かった。養子移入実験では、野生型の顆粒球は血管再生を誘導したが、Tnfa−/−顆粒球では誘導は起こらず、また野生型顆粒球の移入は、Tnfr1-−/−;Tnfr2−/−マウスでは死亡を防止したり、血管再生を促進したりすることがなかった。従って顆粒球は、内皮細胞へTNFαを送達することにより、血管増殖と造血系再生を促している。顆粒球と内皮細胞の間のクロストークの操作は、血管再生を改善し、HSC移植後の生存を増加し造血系再生を促進するための新たな治療法につながる可能性がある。

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