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繊維症:甲状腺ホルモンはマウスの肺繊維症を上皮のミトコンドリア機能の改善により抑制する

Nature Medicine 24, 1 doi: 10.1038/nm.4447

甲状腺ホルモン(TH)はストレス応答の間の細胞の恒常性維持に重要だが、肺繊維症におけるその役割は知られていない。我々は、特発性肺繊維症患者の肺ではTHを活性化する酵素のヨードチロニンデヨージナーゼ2(DIO2)の活性および発現が対照個体に比べて高く、その程度は疾患の重篤度に相関していることを見いだした。またDio2ノックアウトマウスでは、ブレオマイシン誘発性肺繊維症が増悪していることも分かった。エーロゾルTHの噴霧投与は、2種類の肺繊維症モデルマウス(それぞれ気管内ブレオマイシン投与とTGF-β1誘導性分子による)で生存期間を延長し、繊維症を消散させた。またTH模倣薬のソベチロームの投与も、ブレオマイシン誘発性肺繊維症を軽減した。THは、ブレオマイシンによって傷害が生じた後にin vivoおよびin vitroの肺胞上皮細胞でミトコンドリア生合成を促進し、ミトコンドリアの生体エネルギー産生を改善し、ミトコンドリアによって調節されるアポトーシスを低減した。Ppargc1aもしくはPink1をノックアウトしたマウスでの繊維化は、THによって軽減されなかったので、これらの経路が繊維化軽減に関わっていると考えられる。今回の結果から、THが持つ繊維化を防止する性質は肺胞上皮細胞の保護およびミトコンドリア機能の回復と関連していると結論され、従ってTHは肺繊維症の治療に使える可能性がある。

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