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糖尿病:分枝鎖アミノ酸の代謝産物は血管での脂肪酸輸送を促進し、インスリン抵抗性を引き起こす

Nature Medicine 22, 4 doi: 10.1038/nm.4057

インスリン抵抗性の発生に分枝鎖アミノ酸(BCAA)が関与することは、疫学データや実験データによって示されているが、この2つを結びつける機序は明らかになっていない。骨格筋のインスリン抵抗性は脂質種の過剰な蓄積により生じ、こうした蓄積が起こるには血液中の脂質がまず血管壁を通過しなくてはならない。内皮を通過するこのような輸送の仕組みや、それを調節する仕組みはよく分かっていない。今回我々は、脂肪酸消費に関する広範囲にわたるプログラムを調節する転写コアクチベーターのPPARGC1a(別名PGC-1α、Ppargc1aにコードされる)を用いて、BCAAであるバリンの異化中間産物の3-ヒドロキシイソ酪酸(3-HIB)が内皮を通過する脂肪酸輸送の新しいパラクリン性調節因子であることを突き止めた。マウスでは、3-HIBは筋細胞から分泌されて、内皮の脂肪酸輸送を活性化し、in vivoでは筋の脂肪酸取り込みを刺激して、筋肉での脂質蓄積を促進し、それがインスリン抵抗性につながる。逆に、筋細胞で3-HIB合成を阻害すると、PGC-1αによる内皮の脂肪酸取り込み促進が阻害される。糖尿病のdb/dbマウスや糖尿病患者では、糖尿病非罹患の対照に比べて、筋肉中3-HIBレベルが上昇していた。これらのデータは、代謝産物3-HIBが内皮を通過する脂肪酸流量を調節することで、脂肪酸流量の調節とBCAA異化を結び付けるという機構を明らかにしており、BCAA異化産物流量の増加が糖尿病を引き起こしうる仕組みの説明となる。

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