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神経変性疾患:主要組織適合遺伝子複合体クラスI分子は、筋萎縮性側索硬化症でアストロサイトが誘導する毒性から運動ニューロンを保護する

Nature Medicine 22, 4 doi: 10.1038/nm.4052

筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者から単離されたアストロサイトは、運動ニューロンに対して毒性を示し、疾患発症に非細胞自律的な役割を果たしている。運動ニューロンを細胞死感受性とする基盤的機序は分かっていない。本論文では、ALS関連遺伝子に変異が生じているマウスもしくはALS患者に由来するアストロサイトが、運動ニューロンでの主要組織適合遺伝子複合体クラスI(MHCI)分子の発現を低下させ、MHCIの発現低下によってこのような運動ニューロンはアストロサイトが誘導する細胞死を起こしやすくなることを報告する。運動ニューロンでのMHCI発現を増やしてやると、ALSモデルマウスでは生存期間の延長と運動能力の上昇が観察され、運動ニューロンはアストロサイトの毒性から保護される。さらに、MHCI分子の1つであるHLA-Fだけを過剰発現させると、ヒト運動ニューロンはALSアストロサイトが仲介する毒性から保護されるようになるが、ヒトのアストロサイトでHLA-Fの受容体であるキラー細胞免疫グロブリン様受容体KIR3DL2をノックダウンすると、運動ニューロンの細胞死が増加する。従って今回の結果は、ALSでは、運動ニューロン上のMHCI発現の喪失がアストロサイトの仲介する毒性に対する運動ニューロンの脆弱性を高めることを示している。

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