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がん治療:IAPアンタゴニストは複数の骨髄腫で抗腫瘍免疫を誘導する

Nature Medicine 22, 12 doi: 10.1038/nm.4229

がんの約3%で増幅が見られるcIAP(cellular inhibitor of apoptosis)1および2はアポトーシスの回避に関わっていることから、複数の悪性腫瘍で治療標的候補とされてきた。そのため、LCL161のような、腫瘍壊死因子(TNF)を介したがん細胞のアポトーシスを誘導する小分子IAPアンタゴニストが臨床試験に入っている。しかし、多発性骨髄腫(MM)ではcIAP1とcIAP2はホモ接合性欠失を高頻度で起こし、その結果として非古典的NF-κB経路の構成的活性化が見られる。トランスジェニック骨髄腫マウスモデルおよび再発性難治性MMの患者では、LCL161は意外にもin vivoで強い抗骨髄腫活性を示し、シクロホスファミドの追加によって10か月間という無増悪生存期間中央値が観察された。この影響は、腫瘍細胞死の直接的誘導の結果ではなく、腫瘍細胞自律的なI型インターフェロン(IFN)シグナル伝達の上方制御やマクロファージや樹状細胞の活性化を引き起こす強い炎症応答が起こって、これが腫瘍細胞のファゴサイトーシスにつながったためである。MMマウスモデルへのLCL161の投与は長期にわたる抗腫瘍防御を樹立し、一部のマウスで腫瘍退縮を誘導した。また、免疫チェックポイント阻害剤の抗PD1抗体とLCL161の組み合わせでは、投与した全てのマウスで治療効果が見られた。

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