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インフルエンザ:インフルエンザワクチン接種は卵に適応したワクチン株に特異的な抗体を誘導する

Nature Medicine 22, 12 doi: 10.1038/nm.4223

インフルエンザウイルスやHIVなどのウイルスによる感染を幅広く防御できるように、ワクチンは受容体結合部位(RBS)のような保存されたウイルスエピトープに結合する抗体を誘導するのが望ましい。RBSに結合する抗体はHIVおよびインフルエンザの両方で報告されており、それらを誘導する免疫原の設計はこの2種類のウイルスに対するワクチン研究が目指すゴールである。インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)のRBSのアミノ酸残基は、トリの受容体であるα-2,3結合シアル酸、もしくはヒトの受容体であるα-2,6結合シアル酸に対する優先性を決定する。トリ起源ウイルスのヒト間の伝播には、一般的にインフルエンザウイルスRBSをコードする配列に1つ以上の変異が生じて、優先的に結合する受容体をトリのそれからヒトへと変化させる必要があるが、ヒト由来ワクチン候補の鶏卵内での継代では、トリ受容体優先への復帰が選択されることがある。例えば、2009年新型パンデミックH1N1インフルエンザウイルスのX-181株は、A/California/07/2009単離株に由来し、2009年以来実質的に全てのワクチンに使われているが、226番目の位置にアルギニンがあって、これがウイルスH1サブタイプでα-2,3結合に対する優先性を付与することが知られている。野生型A/California/07/2009単離株は、流行中のヒトH1N1ウイルスの大部分と同じように、226番目の位置にはグルタミンが存在している。我々は、現在使用されているインフルエンザワクチンのトリ適応H1株は認識するが、流行している新型パンデミック2009ウイルスは認識しない抗RBS抗体を3人から得たことを報告する。ワクチン株のRBS中のArg226がこのような制限を説明できる。この3人のドナーのポリクローナル血清も、この優先性を反映している。従って、トリ細胞中で全く継代しない株から生産されたワクチンが広く利用可能になったとき、それらは鶏卵に適応したウイルスから生産された中和抗体よりもRBSに対する幅広い中和活性を示す抗体を誘導する能力がより高いと考えられる。それによって現在の季節性インフルエンザワクチン接種の確立された有用性はさらに広がるだろう。

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