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がん治療:マウスの大きな定着腫瘍を自然免疫応答と適応免疫応答とを組み合わせた免疫療法によって根絶する

Nature Medicine 22, 12 doi: 10.1038/nm.4200

CTLA-4(cytotoxic T lymphocyte–associated protein-4)やPDCD1(programmed cell death 1、別名PD-1)に特異的な抗体を使うチェックポイント阻害は、転移がんで長期間持続する腫瘍退縮を誘導するが、目覚ましい効果が見られるのは少数の患者に限られている。転帰がこのように次善のものに留まっていることの一因はおそらく、進行性腫瘍には免疫抑制経路の複雑なネットワークが存在することであり、こうした腫瘍を単一のシグナル伝達チェックポイントに対する介入で克服できる可能性は低いと思われる。本研究では、複数の同系腫瘍モデルや黒色腫の遺伝学的改変マウスモデルで試みられた、多様な自然免疫細胞と適応免疫細胞を誘導して大きな腫瘍組織を取り除く併用免疫療法について述べる。我々の知る限り、このサイズの腫瘍の内在性免疫による治癒はこれまで不可能だった。抗腫瘍効果を最大にするには、腫瘍抗原を標的とする抗体、半減期を伸ばした組換えインターロイキン2、抗PD-1と強力なT細胞ワクチンという4つの構成要素が必要であった。枯渇実験では、CD8+T細胞、交差抗原提示を行う樹状細胞に加えて、他の複数の自然免疫細胞サブセットが腫瘍退縮に必要であることが明らかになった。治療が有効であると、腫瘍での免疫細胞浸潤と炎症性サイトカイン産生誘導が見られ、抗体を介した腫瘍抗原の取り込みが亢進し、抗原の拡散が促進された。以上の結果は、誘導された内在性免疫応答が大きな定着腫瘍を破壊できることを示しており、通常は治療が困難と見なされるような実験条件下で腫瘍の大部分を治癒することのできる併用免疫療法の重要な特徴を明らかにしている。

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