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クッシング病:HSP90のC末端阻害剤はグルココルチコイド感受性を回復させ、クッシング病の同種移植マウスモデルで症状を軽減する

Nature Medicine 21, 3 doi: 10.1038/nm.3776

副腎皮質刺激ホルモン産生細胞におけるグルココルチコイド受容体(GR)の機能の1つは、ストレスホルモンである副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の前駆体のプロオピオメラノコルチン(POMC)をコードする遺伝子の転写抑制である。クッシング病は、ACTHを過剰分泌し、不完全なグルココルチコイド抵抗性を示す副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫によって生じる神経内分泌疾患の1つで、副腎皮質ホルモン過剰症を引き起こす。グルココルチコイド抵抗性がGRの機能を損なう変異によって説明されるのは、孤発型クッシング病の場合のみである。だが、GRタンパク質が適切に折りたたまれるかどうかはシャペロンである熱ショックタンパク質90(HSP90)との直接的な相互作用に依存している。本論文では、副腎皮質刺激ホルモン産生腺腫では、健常な下垂体と比べるとHSP90が過剰発現していることを示す。HSP90のN末端あるいはC末端に作用する阻害剤は、HSP90が関わる触媒サイクルの異なる段階で働いて副腎皮質刺激ホルモン産生細胞の増殖やGRの転写活性を調節する。C末端阻害剤はHSP90からの成熟型GRの遊離を促進し、これによってGRのシャペロンサイクルからの離脱が進んで、副腎皮質刺激ホルモン産生細胞株や初代培養細胞でGRの転写活性が増強される。また同種移植マウスモデルでは、HSP90のC末端阻害剤であるシリビニンが抗発がん作用を示し、変化したホルモン量が部分的に元に戻り、クッシング病の症状が軽減された。これらの結果は、熱ショックタンパク質の過剰発現によって引き起こされ、その結果としてGR感受性の調節異常が起こるクッシング病の発症原因が、適切なHSP90阻害剤によって薬理学的に抑えられる可能性を示唆している。

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