Technical Report

がん:ホルマリン固定してパラフィン包埋した腫瘍標本の全エキソーム塩基配列解読と臨床的解釈から得られるがん精密医療の指針

Nature Medicine 20, 6 doi: 10.1038/nm.3559

全エキソーム塩基配列解読(WES)を前向き臨床研究に転用することは、がん患者の治療に大きな影響を及ぼすと考えられるが、臨床で実施するには多くの新規な手法が必要となる。それらには、ホルマリン固定してパラフィン包埋した腫瘍組織に由来するDNAの迅速でロバストなWES、冷凍標本から得られるデータと同程度の解析出力、前向き研究利用のためのWESデータの臨床的解釈などが含まれる。今回我々は、保管されているホルマリン固定・パラフィン包埋腫瘍標本を前向き臨床研究に活かすためのWES基盤技術を開発した。この基盤技術では、WESデータの有効な臨床解析および解釈を行うために演算的手法を用いる。この解釈の枠組みを、511例のエキソームに後ろ向きに適用したところ、臨床的に重要な複数の遺伝子で体細胞性変化の「ロングテール」分布が明らかになった。この手法を前向きに適用すると、患者16人のうち15人で、臨床的に意味のある変化が見つかった。1人の患者では、これまで未検出だった知見から臨床試験への被験者登録に進み、客観的腫瘍縮小効果が得られた。総合的に見て、この手法はがん精密医療(precision cancer medicine)を広く行うための情報を提供すると考えられる。

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