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心疾患:誘導多能性幹細胞とオンチップ心臓技術を用いてバース症候群ミトコンドリア心筋症モデルを作製する

Nature Medicine 20, 6 doi: 10.1038/nm.3545

単一遺伝子性ミトコンドリア心筋症の研究からは、心臓の発生と心疾患におけるミトコンドリアの役割についての知見が得られる可能性がある。本研究では、患者由来の遺伝学的に改変した誘導多能性幹細胞(iPSC)と組織工学の手法とを組み合わせて、バース症候群(BTHS)の心筋症の基盤となる病態生理を解明した。BTHSはミトコンドリア病であり、tafazzinをコードする遺伝子(TAZ)の変異によって起こる。我々は、BTHSのiPSCから誘導した心筋細胞(iPSC-CM)を用い、TAZ変異に関連した代謝、構造および機能の異常を明らかにした。BTHS iPSC-CMは、まばらで不規則なサルコメアを形成し、人工BTHSオンチップ心臓(heart-on-chip)組織の収縮は弱かった。遺伝子置換とゲノム編集により、TAZ変異がこのような表現型を生じるのに必要十分であることが明らかになった。サルコメア形成と心筋収縮の異常は、細胞全体でのATPレベルが正常な条件下で生じていた。機構的には、TAZ変異と心筋細胞機能障害を結びつけているのは、過剰なレベルの活性酸素種である。我々の研究はバース症候群の病因に新たな知見をもたらすとともに、新たな治療戦略を示唆し、iPSCを使った心筋症のin vitroモデルを進歩させるものだ。

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