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がん:血中分枝鎖アミノ酸濃度の上昇はヒトの膵腺がん発症の早期に起こる事象である

Nature Medicine 20, 10 doi: 10.1038/nm.3686

膵管腺がん(PDAC)の患者のほとんどは、診断された時点でがんがすでに進行していて、その後の生存は12か月未満であることが多い。PDACは肥満や耐糖能異常と関連付けられてきたが、血中代謝産物の変化が早期のがん進行と関連するかどうかは分かっていない。我々は、この疾患の早期に起こる代謝異常の解明を進めるために、4つの前向きコホート研究の膵がん患者(症例)群とそれにマッチする対照群の診断前血漿について代謝産物のプロファイリングを行った。複数の分枝鎖アミノ酸(BCAA)の血漿中レベルの上昇が、将来的に膵がんと診断されるリスクの2倍を超える上昇に関連することが分かった。このリスク上昇は既知の素因とは無関係で、膵がんと診断される2〜5年前(この時点で潜在がんが存在していると考えられる)に試料を採取した被験者で観察された関連の中で最も強力なものだった。血漿BCAAは、変異型Kras発現によって引き起こされた早期膵がんのマウスでも上昇しているが、他の組織にKras誘導性腫瘍を持つマウスでは上昇しておらず、早期膵がんに伴って見られる血漿BCAA増加は、組織タンパク質の分解によって説明されることが明らかになった。これらの知見は、全身でのタンパク質分解の増加がPDAC発症の早期事象であることを示唆している。

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