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筋再生:STAT3シグナル伝達は衛星細胞の増殖および骨格筋修復を制御している

Nature Medicine 20, 10 doi: 10.1038/nm.3656

筋再生能は加齢や疾患に伴い徐々に失われるが、その一因は筋修復に直接関わる衛星細胞の数の減少と機能低下である。だが、衛星細胞の機能低下や数の大幅な減少を引き起こすエフェクター分子についてはほとんど知られていない。インターロイキン6(IL-6)などの炎症性サイトカインの濃度上昇は、加齢や筋萎縮に関連する病態と関係がある。筋萎縮時には、IL-6の下流に位置するエフェクターのSTAT3の濃度も上昇する。またSTAT3は、複数の組織で自己再生および幹細胞運命の調節に関与していると考えられてきた。本論文では、IL-6によって活性化されたStat3シグナル伝達が衛星細胞の挙動を調節していて、筋分化誘導因子1(Myod1)の調節により筋細胞系譜の分化進行を促進することを示す。Pax7を発現している衛星細胞でStat3を条件付きに欠失させると、筋再生中に衛星細胞の増殖が起こったが、こうした細胞では筋再生につながる分化が障害されているために筋繊維再生へは寄与できなかった。これに対して、Stat3発現の一過的阻害では、衛星細胞の増殖が促進され、老化した、あるいは萎縮した筋肉の両方で組織修復が増強された。細胞運命や増殖へのSTAT3阻害の影響は、ヒトの筋芽細胞でも保存されていた。この結果は、STAT3活性の薬理学的操作が、病的状態での衛星細胞の機能喪失を防ぎ、それによって内因性の筋再生応答を維持し、筋萎縮疾患を軽減できる可能性を示している。

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