Between Bedside and Bench

幹細胞の可能性をフル活用する:ミトコンドリア病を予防するための道

Nature Medicine 19, 12 doi: 10.1038/nm.3422

幹細胞は当初、非常に多くの病気に効く「魔法の弾丸」だと考えられていたが、幹細胞を使った実験で実証された治癒を臨床でも達成しようというトランスレーショナル研究は、まだもって道半ばといった段階にある。基礎研究によって幹細胞が内包する能力が明らかになりつつあり、多様な病態に対処するには幹細胞のこういう能力をどのように使いこなせばいいのかが、さまざまな分野で探索されている。BENCH TO BEDSIDEではA Tanakaたちが、変異ミトコンドリアを持つ母親に由来する発生初期段階の卵からゲノムを取り出し、健常女性ドナー由来の除核した卵へ移植すると、ミトコンドリア病が解消される仕組みについて論じている。ゲノム移植で持ち込まれた変異ミトコンドリアDNAは無視できるほどの量で、その後の胚性幹細胞は健常なミトコンドリアDNAを持つ多様な細胞種へ分化したことから、この方法はミトコンドリア病の子孫への伝達を防ぐのに使える可能性がある。著者たちは安全性に関する懸念や、この新技術を臨床へつなげるために解決しなければならない残りの技術的問題について論じている。BEDSIDE TO BENCHではN YangとM Wernigが、ミエリン形成障害のある小児で、移植されたヒト神経幹細胞が生着してドナー細胞由来のミエリン形成が起こったことを示した小規模な研究について、詳しく検討している。

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