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高血圧:平滑筋細胞のミネラルコルチコイド受容体による血圧の直接的調節

Nature Medicine 18, 9 doi: 10.1038/nm.2891

高血圧は、北米の60歳以上の成人の2/3以上で見られる心血管系の危険因子である。血圧上昇は、心臓発作、脳卒中、心不全や腎不全への進行のリスク増大と相関している。現在使われている治療法は、高血圧患者のおよそ半数で血圧を十分に制御できていない。腎臓で機能するミネラルコルチコイド受容体(MR)は、アルドステロンの結合とナトリウム貯留刺激を介して血圧を調節することが知られている。しかし最近の研究によって、MRは腎臓外でも作用しているという説や、ナトリウム処理の不足だけでは高血圧とこれに関連する心血管疾患の罹患を完全に説明することができないという説が裏付けられている。我々、および他の研究グループによってヒト血管平滑筋細胞(SMC)で機能するMRが明らかにされており、血管MRが直接的に血圧を調節する可能性が示唆されている。今回我々は、SMC特異的にMRを欠損したマウスでは、加齢とともに血圧が低下し、腎臓のナトリウム処理や血管構築には異常が生じないことを示す。SMCのMR(SMC-MR)を欠く老齢マウスでは、血管の筋原性緊張、アゴニスト依存性収縮およびL型カルシウムチャネルの発現と活性が低下した。さらに、SMC-MRはアンギオテンシンIIが誘発する血管酸化ストレスや血管収縮、高血圧の一因となっている。本研究は、血管MRの血圧調節と血管老化における新たな役割を明らかにし、血管緊張が全身血圧に直接的に関与するという新たな仮説を裏付けている。

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