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虚血:Adora2bに誘発されるPer2安定化は、虚血への心筋の適応にきわめて重要なHIF依存性代謝切り替えを促進する

Nature Medicine 18, 5 doi: 10.1038/nm.2728

アデノシンシグナル伝達は、酸素利用の制限に対する心臓の適応にかかわっているとされてきた。我々はAdora2b(adenosine receptor A2b)に誘発される心臓の適応応答について広範囲にわたって探索を行い、概日リズムタンパク質のPer2(period 2)がAdora2bの標的であることを突き止めた。心筋虚血の際に、Adora2bシグナル伝達はPer2を安定化させる。虚血条件下では、Per2–/–マウスの梗塞サイズは野生型マウスに比べて大きく、虚血プレコンディショニングによって得られる心臓保護作用が失われていた。代謝研究から、Per2–/–マウスの虚血心臓では、酸素を効率よく使う解糖系での炭水化物使用が制限されていることがわかった。この障害は、低酸素誘導因子1α(Hif-1α)の安定化が阻害されることが原因である。さらに、強光をマウスに照射して心臓のPer2を安定化させると、解糖系酵素の転写誘導が起こり、虚血に対するPer2依存性の心臓保護が認められた。今回の研究は、HIFに依存する心臓代謝および虚血耐性の制御にアデノシンが誘発するPer2安定化作用がかかわっていることを明らかにし、Per2安定化が心筋虚血治療の新規治療戦略になる可能性を示している。

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