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神経変性疾患:タウ欠乏はAPPが介在する鉄搬出の障害によって、認知症を伴うパーキンソン症候群を誘発する

Nature Medicine 18, 2 doi: 10.1038/nm.2613

微小管関連タンパク質のタウは、アルツハイマー病とパーキンソン病の両方に対するリスク対立遺伝子を持ち、タウの変異はタウオパチーと呼ばれる脳変性疾患を引き起こす。これらの疾患で、凝集したタウは神経原繊維がもつれあった塊を作るが、タウの機能あるいは病因への関与の仕方については、ほとんど明らかにされていない。ニューロンへの鉄の蓄積は、アルツハイマー病では皮質、パーキンソン病では黒質(SN)、タウオパチーでは多様な脳領域で病理学的に観察される。本論文では、タウをノックアウトしたマウスが年齢に依存して、脳萎縮、鉄蓄積ならびにSNにおけるニューロン喪失を発症し、これに伴って認知障害とパーキンソン症候群が見られることを報告する。このような変化は、中程度の強さの鉄キレート剤であるクリオキノールの経口投与によって防止される。アミロイド前駆体タンパク質(APP)のフェロキシダーゼ活性は、細胞表面にあって鉄を搬出するフェロポーチンと結びついているが、アルツハイマー病ではその活性が阻害されており、その結果ニューロン内に鉄が蓄積する。初代培養ニューロンでは、タウ喪失もAPPの細胞表面への移動低下により鉄の保持を引き起こすことがわかった。アルツハイマー病およびタウオパチーの患者の脳の病変域では可溶性タウ濃度が低下しており、パーキンソン病および1-メチル-4-フェニル-1,2,3,6-テトラヒドロピリジン(MPTP)マウスモデルの両方で、SN中の可溶性タウも同様に減少していることがわかった。これらの結果は、可溶性タウの激減が、アルツハイマー病、パーキンソン病およびタウオパチーで見られるニューロンへの有毒な鉄蓄積の一因であることを示唆しており、こうした蓄積は薬理学的に救済できると考えられる。

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