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がん:PDGF-BBは間質細胞でのエリスロポエチン産生誘導によって造血と腫瘍血管新生を変化させる

Nature Medicine 18, 1 doi: 10.1038/nm.2575

血小板由来増殖因子(PDGF)シグナル伝達系は、腫瘍での血管新生と血管リモデリングに関わっている。本論文では、PDGF-BBがマウス腫瘍モデルでPDGF受容体β(PDGFR-β)を発現する間質細胞および血管周囲細胞を標的としてエリスロポエチン(EPO)mRNAおよびEPOタンパク質の発現を誘導することを示す。腫瘍由来PDGF-BBは、腫瘍増殖、血管新生および髄外造血を促進するが、少なくともその一部はEPO発現の変化を介して起こる。さらに、腫瘍のないマウスにアデノウイルスを介してPDGF-BB遺伝子を導入すると、EPO産生と赤血球生成の両方が増加するとともに、放射線照射誘発性貧血が抑制された。分子レベルでは、PDGF-BB−PDGFR-βシグナル伝達系が、一部は転写因子Atf3による転写調節を介して(おそらく、c-JunおよびSp1というもう2つの転写因子とAtf3との会合を介して)作用することで、EPOプロモーターを活性化することがわかった。我々の知見は、PDGF-BBによって誘導されるEPOが2つの機序を介して腫瘍の増殖を促進することを示唆している。第一には、内皮細胞増殖、移動、出芽および管形成の直接誘導による腫瘍血管新生をパラクリン刺激し、第二には、髄外造血の内分泌刺激によって血流中の酸素量を増加させ腫瘍関連貧血を抑制するのである。

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