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心疾患:ATGLが介在する脂肪異化作用はPPAR-αとPGC-1を介して心臓のミトコンドリア機能を調節する

Nature Medicine 17, 9 doi: 10.1038/nm.2439

ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、エネルギー代謝や炎症にかかわる遺伝子の調節を行う核内ホルモン受容体である。PPARが生物学的活性を発揮するには、脂質リガンド、レチノイドX受容体とのヘテロ二量体形成、およびPGC-1α(PPAR-γ coactivator-1α、Ppargc1aにコードされる)、あるいはPGC-1β(PPAR-γcoactivator-1β、Ppargc1bにコードされる)による共活性化が必要である。今回我々は、脂肪組織特異的リパーゼ(patatin-like phospholipase domain containing protein 2、Pnpla2にコードされる、以下Atglとする)による細胞トリグリセリドの脂質分解により、PPAR活性化に必要な脂質リガンドの生成に関係する必須のメディエーターが産生されることを示す。マウスではAtglの欠損により、PPAR-αとPPAR-δの標的遺伝子のmRNAレベルが低下する。心臓では、Atgl欠失はPGC-1αおよびPGC-1βの発現減少につながり、ミトコンドリアでの基質酸化と呼吸に重大な障害が起こり、それに続いて過剰な脂質蓄積、心機能不全や致死的心筋症が起こる。Atgl欠損マウスにPPAR-αアゴニストによる薬理学的処置を加えて正常なPPAR標的遺伝子発現を再構築すると、ミトコンドリアの障害が完全に回復し、正常な心機能が戻って、若齢での死亡が防止される。以上の知見は、ATGL活性の低下あるいは消失を特徴とする中性脂質蓄積疾患の患者での過度の心臓脂質蓄積としばしば致死的となる心筋症に対する治療法候補を明らかにしている。

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