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白血病:幹細胞の遺伝子発現プログラムはヒト白血病の
臨床転帰に影響を与える

Nature Medicine 17, 9 doi: 10.1038/nm.2415

固形腫瘍や白血病の中には、がん幹細胞(CSC)によって維持され、CSCを頂点とする階層性をもつものがあることが、異種移植モデルによって示されている。このCSCモデルは有望ではあるが、そのヒトにおける臨床的妥当性はまだわかっていない。本論文では、16例のヒト原発性急性骨髄性白血病(AML)検体から,それぞれ複数の細胞集団を選別し、高感度の異種移植アッセイによって白血病幹細胞(LSC)を含む細胞集団を同定したことに基づいて、AMLにはCSCモデルに基づく階層性が存在することを示す。機能が確認された各細胞集団の遺伝子発現解析から、LSCに特異的な遺伝子発現シグネチャーが得られた。同様に、造血幹細胞(HSC)の遺伝子発現シグネチャーも同定された。バイオインフォマティクス解析から、LSCとHSCに共通の中心的な転写プログラムが突き止められ、「幹細胞性」の特性の基礎となる分子装置の存在が明らかになった。CSCとHSCの幹細胞遺伝子発現シグネチャーはともに、患者の生存の非常に有意性の高い独立予測因子であり、ともに既知の予後予測シグネチャー中に存在することがわかった。したがって、幹細胞性の決定因子はAMLの臨床転帰に影響を与えており、LSCは臨床的に妥当であって、異種移植に伴う人為的産物ではないことが確証された。

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