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がん:発がん性PIK3CAによって発生する乳がんはPI3K経路依存性およびPI3K経路非依存性の機序を
介して頻繁に再発する

Nature Medicine 17, 9 doi: 10.1038/nm.2402

PIK3CAの機能獲得型変異はヒトの悪性腫瘍でよく見られる発がん性事象であるため、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)はがん治療の標的となっている。この標的療法は有望であるにもかかわらず、治療抵抗性が生じることが多く、これが治療の失敗につながる。PI3K標的療法に対する抵抗性が生じる機構を解明するために、条件的にヒトPIK3CAH1047Rを発現する乳がんのマウスモデルを構築した。PIK3CAH1047Rによって発生する乳がんの大半が、PIK3CAH1047Rの不活性化後に再発したことは注目すべきである。再発した腫瘍のゲノム解析から、Met(別名c-Met)あるいはMyc(別名c-Myc)の局所的な増幅を含む、多数の異常が明らかになった。Metの増幅は内因性PI3Kの活性化に依存する腫瘍の生存につながるが、Myc増幅を伴う腫瘍はPI3K経路に非依存的になっていた。機能解析から、Mycががん遺伝子非依存性とPI3K阻害への抵抗性の一因であることが示された。また、かなりの割合のヒト乳がんで、PIK3CAの変異とc-MYCの上昇が同時に起こっている。まとめるとこれらのデータは、c-MYCの増加が、腫瘍が現行のPI3K標的療法に対する抵抗性を生じる機序である可能性を示している。

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