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精神遅滞:成体神経幹細胞からのFmrpの除去は海馬依存性の学習を障害する

Nature Medicine 17, 5 doi: 10.1038/nm.2336

脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)の欠損は、遺伝性の知能障害である脆弱X症候群(FXS)の原因となる。FMRP欠損がFXSにおける認知障害にどのようにかかわるのかは、詳細に研究されているにもかかわらず、明らかになっていない。Fmrpヌルマウスでは成体海馬でのニューロン新生低下がみられる。Fmrpは成熟ニューロンにも豊富に存在するので、我々は成体神経幹・前駆細胞(aNSC)でのFmrp発現の機能と成体でのニューロン新生におけるその役割を調べた。本論文では、マウスで誘導性の遺伝子組換えによってaNSCのFmrpを除去すると、in vitroおよびin vivoで海馬のニューロン新生低下が引き起こされ、また海馬依存性の学習が著しく障害されることを示す。逆に、aNSC特異的にFmrp発現を回復させると、Fmrp欠損マウスでみられるこのような学習障害が回復する。これらのデータは、成体でのニューロン新生の欠如がFXSにみられる学習障害の一因である可能性を示唆しており、このような学習障害は、生じてから後にaNSC特異的にFmrpを回復させることで修正可能である。

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