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幹細胞:iPS細胞由来のニューロンを用いた、ティモシー症候群に関連する細胞表現型の解明

Nature Medicine 17, 12 doi: 10.1038/nm.2576

単一遺伝子性神経発達障害の研究からは、疾患の発症機序をひも解く鍵となる知見が得られ、また、これらの疾患は特定の遺伝子がどのようにヒト脳の発生・発達を制御しているのかを理解するのに役立つ。ティモシー症候群は、発育遅延および自閉症に関連するL型カルシウムチャネルCav1.2のミスセンス突然変異によって引き起こされる。我々は、ティモシー症候群患者に由来するiPS細胞から、皮質ニューロン前駆細胞とニューロンを作り出した。このような患者由来の細胞では、カルシウム(Ca2+)シグナル伝達と活性依存的な遺伝子発現に異常が見られる。また、これらの細胞は、皮質下層および脳梁投射ニューロンに発現する遺伝子の発現低下などの分化異常も示す。さらに、ティモシー症候群患者由来のニューロンでは、チロシン水酸化酵素の発現異常およびノルエピネフリンやドーパミンの産生増加が見られる。この表現型は、ロスコビチン(サイクリン依存性キナーゼ阻害剤でL型チャネルを遮断する非定型薬)処理によって回復できる。これらの知見は、Cav1.2がヒトで皮質ニューロンの分化を調節していることの重要な証拠であり、また、ティモシー症候群患者での自閉症の発症機序についての新しい手がかりを提供する。

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