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血管形成:マイクロRNA-132によるp120RasGAP減少は内皮細胞を活性化し病的血管形成を促進する

Nature Medicine 16, 8 doi: 10.1038/nm.2186

腫瘍が血管形成の開始スイッチをいれることはよく知られているが、この過程の分子的基盤は十分に解明されていない。今回我々はマイクロRNAである miR-132が内皮細胞内のp120RasGAPを標的とする血管形成スイッチとして働き、血管新生を誘発することを示す。我々は、血管形成のヒト胚性幹細胞モデルで、miR-132の発現が大幅に上昇していることを突き止め、miR-132はヒト腫瘍の内皮細胞や血管腫では強く発現されているものの正常の内皮細胞では検出されないことを見いだした。in vitroで内皮細胞にmiR-132を異所性発現させると、内皮細胞の増殖と管腔形成能が増大したが、マウスで眼球内にmiR-132合成阻害剤の anti-miR-132を注射すると、生後の網膜血管発達が低下した。miR-132の標的候補の中でもっとも可能性の高いものはp120RasGAPだが、これは正常内皮細胞では発現しているが、腫瘍血管内皮細胞では発現していなかった。miR-132を内皮細胞に発現させるとp120RasGAP発現が抑制され、Ras活性が上昇したが、マイクロRNA抵抗性のp120RasGAPはmiR-132による血管形成応答を解消した。anti-miR-132の投与は野生型マウスの血管形成を阻害したが、Rasa1(p120RasGAPをコードする)の誘導型欠失が起こるマウスでは阻害がみられなかったことは注目すべきである。また、anti-miR-132を血管を標的とするナノ粒子により送達すると、腫瘍内皮細胞のp120RasGAP発現が回復し、血管形成が抑制され、ヒト乳がんの同所性異種移植マウスモデルの腫瘍負荷が軽減された。我々はmiR-132が内皮細胞のp120RasGAP発現の抑制により血管形成開始スイッチとして働き、Ras活性化と血管新生を誘導するが、anti-miR-132の投与は血管を休止状態に維持して血管新生を妨げると考える。

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