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心疾患:CIB1は病的心肥大の調節因子である

Nature Medicine 16, 8 doi: 10.1038/nm.2181

肥大性心疾患は西欧諸国における主要な健康問題の1つである。今回我々は、心筋細胞肥大の未知の調節因子のスクリーニングを行い、EFハンドドメインをもつ小型タンパク質であるCIB1(Ca2+ and integrin-binding protein-1)が新規調節因子であることを突き止めた。さらに、酵母ツーハイブリッドスクリーニングによりCIB1の結合相手のスクリーニングを行い、EFハンドドメインを含む類縁のタンパク質であるカルシニューリンBが同定された。カルシニューリンBは、肥大誘発性プロテインホスファターゼであるカルシニューリンの調節サブユニットである。CIB1はマウスおよびヒトの心筋では主に筋繊維鞘に局在し、そこにカルシニューリンを繋留し、その活性をL型Ca2+チャネルと協働して制御する。CIB1タンパク質の量および細胞膜局在は病的心肥大では増強されたが、生理的肥大では増強されなかった。これらの知見と一致して、Cib1欠失マウスでは圧負荷後の心筋肥大、繊維化、心機能不全およびカルシニューリン−NFAT(nuclear factor of activated T cell)活性が顕著に減弱するが、水泳運動後の生理的肥大の程度は変わらなかった。CIB1が心臓特異的に誘導性過剰発現しているトランスジェニックマウスでは、圧負荷あるいはカルシニューリンシグナル伝達に応じて起こる心肥大が増強された。さらに、カルシニューリンAのβアイソザイムをコードするPpp3cb欠失マウスでは、CIB1過剰発現に伴う心肥大の増強が起こらなかった。したがって、CIB1は心肥大のこれまで知られていなかった調節因子であり、カルシニューリンの筋繊維鞘への結合とその活性化を調節する作用を介して働いている。

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