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COMMUNITY CORNER:動的で一過的ながん幹細胞が黒色腫を育てる

Nature Medicine 16, 7 doi: 10.1038/nm0710-758

腫瘍は一定の幹細胞様腫瘍細胞集団から発生し維持されるという説はよく知られているが、異論も多い。ヒト細胞やマウスでの研究から、この説には新たな変更が加えられ、こうした幹細胞様腫瘍細胞は従来考えられていたよりも可塑性が高い可能性が示唆されている。A Roeschたちは、ゆっくり分裂する一群の細胞が黒色腫の増殖と自己再生を維持できる、すなわち、がん幹細胞の顕著な特徴を示すことを見いだした。だが、これらの細胞には、ヒストン修飾因子JARID1Bが関与するエピジェネティックな変化を介して表現型を切り替える能力があり、これは可塑的過程であることが示唆された。JAR1D1Bを発現するヒト細胞は、マウスに移植した場合に黒色腫増殖を開始し維持できるのだが、JARD1Bをもたない細胞は腫瘍増殖の開始のみが可能だった。しかし、JARD1Bをもたない細胞はJARD1Bをもつように切り替わって、腫瘍増殖を維持することができた。がん幹細胞は、もしかすると「動く標的」なのだろうか。だとすれば、このことは治療に対してどんな意味をもつのだろうか。

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