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がん:前立腺がん、胃がん、黒色腫でのRAFキナーゼ経路遺伝子の再編成

Nature Medicine 16, 7 doi: 10.1038/nm.2166

ETS(erythroblastosis virus E26 transformation-specific)ファミリーの転写因子が含まれる頻発性の遺伝子融合は前立腺がんで広くみられるが、その産物は従来の方法では「薬剤標的とはならない」とみなされてきた。最近、ALK(anaplastic lymphoma receptor tyrosine kinase)遺伝子が含まれる、稀で標的化が可能な遺伝子融合が肺がんの1〜5%で見つかっており、同様の稀な遺伝子融合が、前立腺がんなどの他の一般的な上皮性がんでも生じている可能性が示唆されている。今回我々はペアドエンド・トランスクリプトーム・シーケンシング法を用い、ETS再編成が起こっていない前立腺がんについて標的化できる遺伝子融合のスクリーニングを行い、SLC45A3-BRAF(solute carrier family 45, member 3-v-raf murine sarcoma viral oncogene homolog B1)とESRP1-RAF1(epithelial splicing regulatory protein-1-v-raf-1 murine leukemia viral oncogene homolog-1)という遺伝子融合を見つけだした。前立腺がん細胞でのSLC45A3-BRAFESRP1-RAF1の発現は腫瘍性の表現型を誘導し、これはRAFおよびマイトジェン活性化プロテインキナーゼキナーゼ(MAP2K1)阻害剤に感受性を示した。患者の大規模コホートでのスクリーニングにより、進行した前立腺がんや胃がん、黒色腫で、RAF経路に、稀ではあるが繰り返しみられる遺伝子再編成が生じる傾向が見られた。まとめると今回の結果は、がんにRAFファミリー遺伝子再編成が重要な役割をもつことをはっきり示している。また、RAFやMEKの阻害因子が遺伝子融合をもつ固形腫瘍の一部で有効である可能性が示唆され、腫瘍のトランスクリプトームやゲノムのシーケンシングが多様な種類のがんで、薬剤標的化が可能な稀な融合の同定につながる可能性が実証された。

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