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神経疾患:脊髄損傷後の運動ニューロンと歩行機能の回復は5-HT2C受容体の恒常的活性に依存する

Nature Medicine 16, 6 doi: 10.1038/nm.2160

脊髄損傷後の筋麻痺の一部は、重要な持続性カルシウム電流の調節により運動ニューロンの興奮性を正常に維持する脳幹由来セロトニン(5-HT)の欠乏によって引き起こされる。今回我々は、運動ニューロンが5-HTの喪失を時間をかけて補い、興奮性を再獲得する仕組みを調べた。ラットで脊髄切断の数ヵ月後、5-HT2C受容体mRNAの転写後編集の変化が、5-HT2C受容体アイソフォームの発現増加につながり、このアイソフォームは5-HTがない状態でも自発的活性(恒常的活性)をもつことがわかった。このような恒常的受容体活性により、5-HTがない状態でも運動ニューロンで大きな持続性カルシウム電流が回復する。これは、運動ニューロンの持続的筋収縮を起こす能力の回復を助け、最終的には歩行などの運動機能の回復を可能にする。しかし、脳からの調節がない状態では、このような持続的収縮は病的な筋攣縮を引き起こす可能性がある。そして、恒常的活性を示す5-HT2C受容体のSB206553あるいはシプロヘプタジンによる遮断は、ラットおよびヒトの両方で、このようなカルシウム電流と筋痙縮を大幅に減弱した。これは抗痙縮薬物治療の新たな理論的根拠を提供するものである。

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