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毛細血管疾患:サリドマイドは血管の成熟を促進し遺伝性出血性毛細血管拡張症患者の鼻出血を軽減する

Nature Medicine 16, 4 doi: 10.1038/nm.2131

遺伝性出血性毛細血管拡張症(HHT)は、血管の形成異常を特徴とする遺伝性疾患である。罹患者の多くでは鼻出血が繰り返し起こり、これは生活の質を著しく損なうことがあり、また臨床的に治療困難である。今回我々は、HHT患者の小集団でサリドマイド投与の影響を検討し、この治療が被験者の大部分で鼻血(鼻出血)の重症度と頻度を軽減したことを報告する。投与を受けた患者では出血の減少と血管構造の安定化が増強され、その結果血中ヘモグロビン濃度が上昇した。エンドグリンをコードするEng遺伝子のヌル変異のヘテロ接合マウスはHHTの実験モデルであり、このマウスはサリドマイド投与によって壁細胞による被覆が促され、これによって血管壁の欠陥が回復した。サリドマイド投与は、内皮細胞で血小板由来増殖因子B(PDGF-B)発現を上昇させ、壁細胞活性化を促進した。サリドマイド投与の影響は、内皮細胞から周皮細胞へのPDGFシグナル伝達を薬理学的あるいは遺伝学的に妨げると、部分的に無効となった。サリドマイドを投与したHHT患者としなかった患者由来の鼻上皮の生検により、ヒトへのサリドマイド投与の影響が同様の機構で説明される可能性が示された。以上の結果は、サリドマイドが血管成熟を誘導できることを実証しており、これは血管形成異常の治療戦略として有用と考えられる。

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