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幹細胞移植:EGFRシグナル伝達の薬理学的阻害によるG-CSF誘導性造血幹細胞動員の増強

Nature Medicine 16, 10 doi: 10.1038/nm.2217

サイトカインである顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)による骨髄から末梢血への造血幹・前駆細胞(HSPC)動員は、幹細胞移植のHSPC供給源として推奨されている。しかし、G-CSFは最大10%のドナーで十分な数の幹細胞を動員できず、このようなドナーでの自家移植が妨げられたり、移植後の造血能回復が相当度遅れたりする。そのため、動員により末梢血における幹細胞数を増加させる新しい方法が必要とされている。我々は、マウスで順遺伝学的手法を使い、上皮増殖因子受容体(Egfr)をコードする遺伝子が、G-CSFを介したHSPC動員を調節する遺伝子領域に位置することを見いだした。HSPCのEGFR量が、G-CSFによって動員可能という細胞の能力と逆相関することは、EGFRシグナル伝達が動員に負の役割を担うことを示唆している。G-CSF投与と組み合わせて、HSPCのEGFR活性の遺伝学的低下(waved-2変異マウス)、あるいはEGFR阻害剤であるエルロチニブ投与を行うと、動員数が増加した。EGFR活性の抑制による動員増加は、Cdc42(cell division control protein-42)の活性低下と相関しており、またin vivoで遺伝学的にCdc42を欠損させても、G-CSFによって誘導される動員が増強された。我々の知見は、幹細胞の動員を調節するこれまで知られていなかったシグナル伝達経路を明らかにし、またHSPC動員とそれによる移植転帰の改善のための新しい薬理学的方法を示している。

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