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精神疾患:パニック不安におけるオレキシンの重要な役割

Nature Medicine 16, 1 doi: 10.1038/nm.2075

パニック障害は、反復性で衰弱をもたらすパニック発作を伴う重症の不安障害である。パニック障害の患者では、中枢神経のγアミノ酪酸(GABA)活性の低下、および高張性乳酸ナトリウムの静脈内投与後の自律神経反射と呼吸反射の著しい増大がみられる。ラットのパニック症候群モデルでは、視床下部背内側-脳弓周囲領域でのGABA生合成の慢性的抑制により、不安に似た状態が生じ、乳酸ナトリウム誘発性心臓興奮性応答に対するヒトと同様の脆弱性が引き起こされる。視床下部背内側-脳弓周囲領域には、オレキシン(ORX、別名ヒポクレチン)含有ニューロンが豊富であり、いずれもパニックの重要な構成要素である覚醒、不眠症、中枢性自律神経系のモビライゼーションに重要な役割を果たす。今回我々は、ORX産生ニューロンの活性化が、パニックのラットモデルでのパニックを起こしやすい状態の出現に必要であり、視床下部のORXをコードする遺伝子(Hcrt)のRNAiによるサイレンシングあるいは全身的に働くORX-1受容体アンタゴニストがパニック応答を遮断することを示す。さらに、パニック障害のあるヒト被験者では、パニック不安症のみられない被験者に比べて脳脊髄液中のORX濃度が上昇していることもわかった。総合すると以上の結果は、ORX系がパニック不安障害の病態生理に関与する可能性と、ORXアンタゴニストがパニック障害に対する新たな治療戦略となりうることを示唆している。

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