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脂肪代謝:マウスで腸の酵素アシルCoA:モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ2の欠損は、高脂肪食が誘発する代謝異常を起こりにくくする

Nature Medicine 15, 4 doi: 10.1038/nm.1937

動物は食餌中の脂肪をきわめて効率よく吸収し、この高エネルギー栄養素を白色脂肪組織(WAT)へと同化する。この代謝効率は、カロリー欠乏時には利点となるが、脂肪が多く含まれる食餌の場合には、肥満とそれにともなう代謝異常の一因となる。今回我々は、マウスで腸の脂質合成酵素アシルCoA:モノアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ2(MGAT2)が、食餌脂肪の同化と体脂肪増加に非常に重要な役割を果たすことを示す。MGAT2を欠損するマウスは、低脂肪食では正常な表現型を示す。しかし高脂肪食では、MGAT2欠損マウスは肥満、耐糖能低下、高コレステロール血症、脂肪肝が起こりにくくなる。MGAT2欠損マウスのカロリー摂取は正常であり、食餌中の脂肪はすべて吸収されるが、食餌脂肪の循環血中への移行速度が低下する。脂肪吸収動態のこのような変化は見かけ上、食餌中の脂肪をWATに貯蔵するより、エネルギー散逸の方へ多く分配することになる。したがって今回の知見は、食餌中の脂肪に対する応答でMGAT2がエネルギー代謝の重要な決定因子であることを明らかにしており、この酵素の阻害は、過剰の脂肪摂取による肥満やその他の代謝性疾患治療のための有用な戦略となる可能性がある。

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