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動脈硬化症:マクロファージ脂質シャペロンを介する小胞体ストレスを軽減するとアテローム性動脈硬化症が改善される

Nature Medicine 15, 12 doi: 10.1038/nm.2067

マクロファージは、アテローム性動脈硬化症に関連する脂質毒性シグナルに曝されると小胞体ストレスを示すが、この現象の病態生理学的重要性やその基盤となる機構についてはわかっていない。今回我々は、化学シャペロンによる小胞体ストレスの軽減が、脂質毒性によるマクロファージ細胞死に対して顕著な防御効果を示し、マクロファージ脂肪酸結合タンパク質4(aP2)の発現を防ぐことを明らかにする。また、遺伝学的あるいは化学的モデルを用いて、aP2が脂質で誘導されるマクロファージ小胞体ストレスの主要な調節因子であることを示す。脂質シャペロンがない状態では、一価不飽和脂肪酸を多く含むリン脂質や生理活性をもつ脂質の産生が増加し、これらはマクロファージに脂質誘導性小胞体ストレスに対する抵抗性を与える。また、マクロファージの脂質代謝および小胞体ストレス応答へのaP2の影響は、肝臓X受容体による重要な脂質合成酵素の発現増加を介して起こる。我々の結果は、動脈硬化症ではマクロファージ小胞体の恒常性調節に脂質シャペロンが中心的役割を担っていることを実証しており、また小胞体応答は遺伝学的もしくは化学的修飾が可能で、これにより脂質異常症の有害な影響から生体を防御できることを示している。

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