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繊維症:プロスタグランジンF受容体シグナル伝達はトランスフォーミング増殖因子β非依存的にブレオマイシン誘発性肺繊維症を促進する

Nature Medicine 15, 12 doi: 10.1038/nm.2066

特発性肺繊維症(IPF)は、繊維芽細胞の増殖やコラーゲンなどの細胞外マトリックス(ECM)タンパク質の過剰な沈着で肺に構造や機能の異常を引き起こす進行性の疾患である。現在IPF患者は抗炎症薬や免疫抑制薬で治療されているが、これらは有効性に乏しく、繊維形成機構そのものを標的とする新たな治療薬の開発が望まれている。さまざまな繊維症でトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)の働きが不可欠とされているが、IPFの動物モデルであるブレオマイシン誘発性肺繊維症でTGF-β経路を阻害しても、繊維症は完全に抑制できない。このことから、繊維形成にTGF-β以外の経路も重要な役割を担っていることが推測される。細胞質ホスホリパーゼA2(cPLA2)の欠損がブレオマイシン誘発性肺繊維症を抑制することから、我々は各プロスタグランジン受容体を欠損するマウスを使ってプロスタグランジン類の役割について検討した。本論文では、プロスタグランジンF(PGF)受容体(FP)の選択的欠損により、ブレオマイシン誘発肺繊維症が軽減されること、このときに肺の炎症やTGF-β活性化は野生型マウスと同程度に見られること、またFP欠損とTGF-βシグナル伝達抑制を併せると、繊維症が相加的に軽減されることを示す。実際に、PGFはIPF患者の気管支肺胞洗浄液(BALF)に豊富に存在し、これは、TGF-β非依存的にFPを介して肺繊維芽細胞の増殖とコラーゲン産生を促進する。以上の知見は、PGF-FPシグナル伝達経路がTGF-β非依存的に肺繊維症を促進することを明らかにしており、このシグナル伝達経路がIPFの治療標的となる可能性を示唆している。

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