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肝炎:血小板由来セロトニンによるウイルス性肝炎の悪化

Nature Medicine 14, 7 doi: 10.1038/nm1780

B型肝炎ウイルスあるいはC型肝炎ウイルスに持続感染している人は、世界中で5億人を超える。どちらのウイルスも細胞変性効果は低いが、いずれに持続感染しても慢性肝炎を発症するリスクがあり、その結果、肝脂肪症、肝硬変、末期肝不全あるいは肝細胞がんになる可能性がある。ウイルス特異的T細胞は、慢性肝炎ウイルスの感染早期の制御に寄与するが、ウイルスの持続感染時には免疫現象による病態形成にもかかわるために、肝炎の転帰の主要な決定因子となる。我々は、細胞変性効果を示さないリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルスに感染しているマウスで、ウイルスが誘発するCD8+ T細胞依存的な免疫病理学的肝炎に対する血小板由来血管作動性セロトニンの役割を調べた。ウイルス感染後、血小板の肝臓への動員が起こり、その活性化は肝類洞微小循環の激減、ウイルス排除の遅延および免疫病理学的な肝細胞傷害の増加と関連していた。セロトニン欠損マウスでは、血小板由来セロトニンが存在しないために、肝微小循環機能不全の正常化、肝臓でのウイルス排除の促進、およびCD8+T細胞依存的な肝細胞傷害の減少が認められた。感染マウスにセロトニンを投与すると、活性化CD8+T細胞の肝臓移入の遅延、ウイルス制御の遅延、および免疫病理学的肝炎の悪化が認められたことは、上記の観察と一致している。したがって、血管作動性セロトニンは、肝臓でのウイルス持続を助け、ウイルス誘発性免疫現象による病変を悪化させる。

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