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血管拡張:SNO-ヘモグロビンは赤血球に依存する低酸素誘発性血管拡張に必須ではない

Nature Medicine 14, 7 doi: 10.1038/nm1771

低酸素時の血流では、ヘモグロビンによる生理的酸素勾配の感知と、酸化窒素(NO)生物活性への刺激が必ず連動して起こる。この酸素感知とNO生物活性の連動の説明として考えられている機序の1つは、ヘモグロビンβ鎖の保存されているCys93残基(βCys93)が必須の役割をもち、S‐ニトロソヘモグロビン(SNO-Hb)形成の際のβCys93のS-ニトロソ化にかかわるとするものである。このSNO‐Hb説は、ヘモグロビンとNOの生物学的性質を概念的に結びつけるもので、最近さかんな議論が行われている。このため、生理的機序について、また病態にSNO-Hbが果たすと予想される役割について、見解の一致は得られていない。本論文では、ヒトの野生型ヘモグロビン、またはβCys93残基がアラニンに置換されたヒトヘモグロビンのいずれか一方を発現する新たなマウスモデルを用いた、赤血球を介した低酸素誘導性血管拡張におけるSNO-Hbの役割の評価について報告する。この残基が置換されると、ヘモグロビンのS-ニトロソ化が妨げられるが、赤血球のS-ニトロソチオールの総量は変化しなかった。しかし、SNO-Hbの消失と一致して、S-ニトロソチオールの分布が低分子量種へと移行した。βCys93の欠損は、安静時には全身または肺の血行動態に障害を起こさず、特に、単離赤血球依存性の低酸素誘導性血管拡張に対する影響も認められなかった。この結果は、SNO-Hbはin vivoでの赤血球の脱酸素化とNOの生物活性増加との間の生理学的連動に必須ではないことを実証している。

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