Technical Report

遺伝子検査:PCR法のCOLD-PCR法への置換により変異DNA配列を濃縮して遺伝子検査の感度を向上させる

Nature Medicine 14, 5 doi: 10.1038/nm1708

PCR法は、遺伝子検査の最初の段階にあたるDNA増幅に広く用いられている。しかし、PCRを基盤とする手法にともなう重要な限界の1つは、野生型の背景にまぎれた低度の変異を選択的に増幅できない点である。この結果、それ以降の解析において、臨床的判断や転帰に大きな影響を及ぼす可能性がある微小な遺伝的変化の検出能が限られてしまう。今回我々は、低い変性温度で同時増幅するPCR(co-amplification at lower denaturation temperature PCR:COLD-PCR)法を開発した。これは、変異の型や塩基配列上の位置とは無関係に、野生型配列と変異含有配列の混合体から選択的に少数派の対立遺伝子を増幅できる、新型のPCR法である。塩基配列解読もしくは遺伝子型解析の前に行う従来のPCR法をCOLD-PCR法に置き換えたところ、変異検出感度は最大で従来の100倍まで向上し、不均一ながん検体中のp53、KRASおよび上皮増殖因子をコードする遺伝子で、現行の手法では見逃されてきた変異を新たに特定できた。臨床に関連する微小欠失については、COLD-PCR法によって変異体の選択的な増幅・単離が可能となった。COLD-PCR法は、がんや感染症、母体血内の胎児対立遺伝子の出生前検査といったPCRを使う遺伝子検査の能力を大きく変えることになるだろう。

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