Letter

癒着形成:インターフェロンγは術後の癒着形成予防のための治療標的分子である

Nature Medicine 14, 4 doi: 10.1038/nm1733

腸管癒着は、腸のループが腸同士、あるいは腹部の他の臓器または腹壁と結合した状態で、バンド状となった繊維組織が臓器を結合している。繊維組織形成は、フィブリン沈着を相互に調節するプラスミノーゲンアクチベーター・インヒビター・タイプ1(PAI-1)と組織プラスミノーゲンアクチベーター(tPA)との間のバランスによって調節される。サイトカイン、ケモカイン、細胞接着分子および神経ペプチドのサブスタンスPなどの炎症系成分は、癒着形成に関与することが報告されてきた。我々は、盲腸焼灼を行い、独特な実験的腸管癒着マウスモデルを作成した。本処置後にマウスは重度の腸管癒着をきたした。癒着形成はインターフェロンγ (IFN-γ)およびSTAT1(signal transducer and activator of transcription-1)の系に依存していた。ナチュラルキラーT(NKT)細胞欠損マウスでは、癒着はわずかしか形成されなかったが、野生型マウスのNKT細胞を用いて再構築した後には重度の癒着が形成され、癒着形成にはNKT細胞によるIFN-γ産生が不可欠であることが示唆された。この応答は、STAT4、STAT6、インターロイキン12(IL-12)、IL-18および腫瘍壊死因子α、Toll様受容体4またはMyD88が介在するシグナルには依存しない。野生型マウスでは、盲腸焼灼後にtPAに対するPAI-1の比が増大したが、Ifng-/-またはStat1-/-マウスでは増大が起こらなかったことから、IFN-γが、PAI-1およびtPAの発現を相互に調節する上で非常に重要な役割を持つことが示唆される。さらに、肝細胞の強力な分裂促進因子である肝細胞増殖因子は、IFN-γ産生抑制によって腸管癒着を強く阻害したことから、術後の癒着予防のための新たな手法となると期待される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度