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神経因性疼痛:マトリックスメタロプロテアーゼは神経因性疼痛発生の初期段階と後期段階で異なる役割を果たす

Nature Medicine 14, 3 doi: 10.1038/nm1723

神経系に対する多様な傷害に起因する神経因性疼痛の治療は、この疼痛発生の基盤となる機構が十分に解明されていないために臨床上の難問となっている。治療のほとんどは、神経因性疼痛の病態生理の異なる段階を区別しておらず、単に神経伝達を遮断して一時的に痛みを和らげることだけを狙っている。本論文では、神経損傷後のラットおよびマウスにおける神経因性疼痛発生の初期段階と後期段階では、異なるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)が必要とされることを報告する。脊髄神経の結紮後、MMP-9は神経因性疼痛の初期段階と同時期に、損傷後根神経節(DRG)の一次感覚ニューロンで急速かつ一過性の活性上昇を示すが、MMP-2はDRGの衛星細胞および脊髄アストロサイトで神経因性疼痛の後期にあたるこれより遅い時期に活性上昇が認められる。MMP-9を髄腔内経路で局所的に阻害すると神経因性疼痛の初期段階が阻害され、MMP-2を阻害すると神経因性疼痛の後期段階が抑制される。また神経因性疼痛症状の発生には、MMP-9またはMMP-2の髄腔内投与で十分である。MMP-9は、神経損傷後の初期にインターロイキン1βの切断とミクログリアの活性化を介して神経因性疼痛を誘導するが、MMP-2はインターロイキン1βの切断とアストロサイトの活性化を介して、後期に神経因性疼痛を維持する。MMPの阻害は、神経因性疼痛の異なる段階を対象とした新たな治療法となる可能性がある。

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